◆2010/6
モノの視方、とらえ方、考え方・・・評価、判断、意思決定に潜む落とし穴
~ヒューリスティック・バイアスの罠
“不一致”の表面化で堰を切ったように脆くも連立体制の一角が崩れ、残された集団の中にも来たる参院選を前にして不透明・不安定な中に不信・疑義が表面化しつつある政治情勢。
一時期に比べ回復基調にあるかのように見えて、実は、対外競争力では隣国や新興国の躍進に大きく水を開けられ、描かれる成長戦略を牽引するはずの実態としてのドライバーがまだ本格的には始動できていない日本経済・・・そんな混沌とした2010年度ですが、4~3月を決算年度とする多くの企業にとっては早くも第一四半期の最終月となりました。
ダイナアーツでは、この第一四半期、昨年度策定のご支援をしてきた企業の事業計画(その多くがこれからの中期をにらんだ新経営計画あるいは新成長戦略)にかかるキーアクションのPDCAを、年間を通して定点的にチェックさせていただきながら、実態としての成果獲得に向けた戦略的なお取り組みの推進に併走させていただくプロジェクトワークが走り出しています。
策定した戦略計画を実行に・・・。皆さんもすぐにおわかりのように、立てた計画の実際の推進は、策定時に決め込んだ内容通りになかなか進むものではありません。なぜなら、策定段階に想定した諸条件、すなわち3C、4C・・・に代表される事業の環境与件のほとんどは過年度を材料として組み上げた推量・推定であって、そうした材料(変数)に基づいて出力された計画の要素・要点のほとんどは“仮説”だからです。
変数が変わればその演算の解も当然変わります。仮説はその適用(implementations)過程において、絶えず現場・現実・現物の実際・実態に照らして検証され、修正(三現主義)を余儀なくされるものだからです。
(コンサルタントである私自身がこんなことを言ってしまってはもともこもないのですが、乱暴ですが、あえて・・・申し上げてしまいますと)どんな秀逸な計画であろうとも、要は、「やってみなくちゃわからない」という性格のもの・・・と言えるでしょう。
したがって、私たちのご支援の“現場”であるプロジェクトワークの実際は、そうした戦略計画の策定段階もさることながら、策定された戦略計画を実行・推進していく場面にこそ、多くの困難が立ちふさがります。
困難!?・・・戦略計画を適用していく現実、実際・実態は、刻一刻と変化するさまざまな問題の集積地であり、実際に直面してはじめてその煩雑さ、甚大さ、(解決するにおいての想像・想定を超えた)難しさを思い知らされます。そして、そうした問題解決・課題対応に臨んでは、出力するソリューション(解決策・対応策)に、唯一・絶対!という正解はありません。
これが、「やってみなくちゃわからない」・・・と前述した理由でもあります。ですが、多くの場合、どんなに優れたメンバーの方々が参集されたプロジェクトにおいても、困難に直面すればするほど、必ずと言っていいほど、私たちは、「正解・・・とまではいかなくとも、最適な解を出せる“方法”、“How to”(=“方程式”のようなもの)を教えてほしい・・・」と要求・要請される場面が数多くあります。
前後しますが、戦略計画の策定段階においても、頭では「コレっという正解なんかはない」とご理解されていても、策定していく戦略計画およびそのアクションプランそのものが、ターゲットとする計画値を達成する、あたかも方程式(変数それぞれに値を入れれば正解が出せる)かのような期待感をお持ちになられてしまうケースが現実には散見されます。
コンサルタントとして、困難な事態をブレイクスルーしていく戦略プロジェクトのご支援させていただく上では、さまざまな期待・要請をしっかりと背負って、誠心誠意務めさせていただくことは極めて当然の責務なのですが、そうした“困難”な作業着手に先立って、私がいつもご注意申し上げることがあります。
「プロジェクトで出力するソリューション(策定する戦略計画、アクションプランを含む)は、決して“アルゴリズム(Algorithm)”のようなものではありません。あえて申し上げるならば、(プロジェクトメンバー方を含む)私たちの経験値や知恵、問題解決のスキルを総動員して組み上げる“ヒューリスティック(Heuristic)・モデル”のようなもの・・・だと理解してください」と。
アルゴリズムとは、数学、コンピューティング、言語学、あるいは関連する分野において、問題を解くための効率的手順を定式化した形で表現したものを意味します。つまり、正解を出せる、正解が出る算法、方程式がまさにこのアルゴリズムです。代わって、ヒューリスティクスとは、必ず正しい答えを導けるわけではないが、ある程度のレベルで正解に近い解を得ることができる方法と説明されるものです。
さらに言えば、答え・解の精度は保障されないが、回答に至るまでの時間が少なくてすむ、主に計算機科学と心理学の世界で使われる語・・・と説明されています。心理学では人間の思考方法そのものを指す、言わば、仮説形成の方法であるとされ、その集積を持ってつくられる戦略計画などは、まさに、絶えず実際・実態に照らしての検証と修正を必要とする仮説そのものであるわけです。
実際にプロジェクトを進めていく場面では、私たちダイナアーツのコンサルタントは、協働(響動)するプロジェクトメンバーの方々と、同じメンバーであると同時に、コーチであり、ファシリテータであり、ご指導申し上げるインストラクタであり、時には、医師のような施術を行う存在でもあり・・・とさまざまな役割を担いながら、プロジェクトとしての成果出力にコミットします。
そして、主役はあくまでクライアント側にて参集されたメンバー方おひとりおひとりであり、私たちは縁の下の・・・に徹します。
そこで、私たちダイナアーツがねらいとすること・・・は、もちろん一義的には、期待される/要求されている成果を出力することなのですが、同時に、そうした成果出力を結果できるようになっていくプロジェクトのメンバーおひとりおひとりの進化・変化・内発的ブレイクスルーを促進・加速するということに対して、とても重たい責務を担っていると考えています。
前述のヒューリスティクス・・・という方法、それによって組み上げられるヒューリスティック・モデルとしての戦略計画は、まさに、そうしたプロジェクトのメンバーおひとりおひとりの思考の進化・深化の結実であるわけですが、実は、私たちコンサルタントにとっての本当の、最大の困難は、実はメンバー方とのそうした協働取り組みの過程そのものに横たわっています。それは、メンバー方おひとりおひとりの“思考方法に巣食う癖”との戦い・・・です。
思考方法に巣食う癖。大きく3つ挙げられます。
個々人毎に異なる経験値、体験、キャリア(教育背景を含む)などによって培われてしまう/しまったものですが;
①実際には、他にさまざまな判断・評価の基軸があるにもかかわらず、自分が想起しやすい事柄や経験、得やすい材料を優先して判断・評価の基軸としてしまう思考の癖
②わかりやすいけれども一部でしかない情報をもって、他ケースにおいてもその情報を適用してしまい、「この場合にもこうだろう」と、発生する事柄の確率を過大に評価してしまう思考の癖
③自分が最初に接した、最初に出会った情報に、わずかに調整を加えていくことでそれを判断・評価の重点基軸としてしまい、何につけても極端にその基軸をもとに判断・評価してしまう思考の癖
以上は、心理学の世界での類型なのですが、①が利用可能性ヒューリスティック (availability heuristic)、②が代表性ヒューリスティック (representative heuristic)、③が係留と調整 (anchoring and adjustment)と分類されている、ヒューリスティック・バイアス(偏った思考方法、性癖)と称されているものです。
「自分にとって耳障り、都合が悪い事柄は、なかなか思考の深層に入っていかない(=人間は、自分にとって耳障りのいい事柄、都合のいい事柄をもって思考・判断・意思決定する傾向がある)」 古来より言われている、この“人間の思考に巣食う癖”は、まさに、このヒューリスティック・バイアスそのものです。
そして、人間誰しもその思考方法の中に具備してしまっているこのヒューリスティック・バイアスの存在。これこそが、私たちが進めるプロジェクトにおける最大の落とし穴、引っかかってはいけない罠となっています。
その落とし穴に陥らないように・・・。私たちダイナアーツのコンサルティングの現場では、その多くが、複数の当事者のコミットメントの中で、侃々諤々の議論と響動を推進コンセプトとするプロジェクトワークとして進めさせていただいています。
徹底した使命感とこだわりを持たれた当事者方相互のインターラクティブなお取り組みこそが、このヒューリスティック・バイアスの罠を回避するとても有効な方法だからです。
今、この時代だからこそ、入魂・本気のお取り組み…。
私たちダイナアーツは喜んでお手伝いをさせていただきます。
(加藤)
|