◆2009/8
“ゼロ”と“0.00%”は違う!? 〜顧客ニーズを読み取り新市場を創った「キリンフリー」〜
仕事の後のビールは本当に美味しいですよね。(特にこの時期は)

私も一日の楽しみにしています。
しかし、そんなビール党の私にとって、飲みたいのに飲めない時、例えば車の運転をしなくてはいけない時等は、本当につらい思いをします。
でもそんな時も大手を振って飲めるビールが出て、大人気になっています。
今回はそんな夢のような“ビール”の話です。
その商品は「キリンフリー」(以下フリー)。
正確には“ビール”ではなく、“ノンアルコールビール(ビールテイスト 飲料)”です。
このフリーがもの凄い勢いで売れています。
どれくらい売れているかと言うと・・・
●2009年4月より発売開始
●発売後1ヶ月で年間目標の過半数に当たる34万ケースを売り上げる
●5月14日には、早くも年間目標は当初の2.5倍(160万ケース、約2万キロリットル)に上方修正
●ちなみに2008年度のビールテイスト飲料の市場規模は約3万2千キロリットルで、そのうちキリンのシェアは5,700キロリットルしかなかった。
スゴイ売れ行きですね。
しかし、“ノンアルコールビール”は今までも、ありました。
ではなぜ、フリーはこんなにも売れているんでしょうか?
最大のポイントは、「0.00%」。
今までのノンアルコールビールと呼ばれている商品は、0.01〜0.5%の微量のアルコールが入っていましたが、フリーはアルコールが「0.00%」、つまりアルコールは“全く”入っていません。
この“わずかな差”が実は決定的に違うのです。
それはフリーの開発に至る経緯にも関係しています。
フリーの開発が始まったのは2007年からです。
それは同年6月の道路交通法の改正で飲酒運転の罰則が強化されたことにより「運転前に安心して飲めるビールを開発して欲しい」という多数の要望を受けたことから始まっています。
この時期の消費者心理としては今までのノンアルコールビールに対して、「これぐらいなら大丈夫かな!?」 から 「車の運転に際してアルコールは口にできない」に劇的に変化をしたと言えると思います。
※「これぐらいなら〜」も本来はもちろんいけないことですが。
そしてそもそも飲酒運転の検査への反応も、個人のアルコールの処理能力に差があり、従来のノンアルコールビールを飲んでも基準値を超えてしまう可能性もあります。
またいくら低アルコールとは言え、何本も飲んでしまうと当然基準値を超えることも考えられます。
つまり、従来のノンアルコールビールでは道路交通法の改正前でも後でも、飲酒運転に対して、必ずしも「安全・安心」とは言えませんでした。

(それは前述の市場規模にも表れているのではないでしょうか?)
しかし、フリーは違います。
なぜなら“全く”アルコールが入っていない「0.00%」の商品だからです。
あえて言えば、全く違う種類の商品と言えるかもしれません。
もちろんフリーを何本飲んでも車の運転はOKです。
それだけでなく(私も経験したことがありますが)車を運転しながらフリーを飲んでも問題ありません!(心理的にはちょっとひけ目を感じますが<苦笑>)
この圧倒的な“安心感”がフリーの爆発的な売上を伸ばしている大きな要因だと言えると思います。
一般的に“不”を取り除く商品やサービスは、よく売れます。
“不”とは、“不満、不便、不安、不平、不信・・・”などです。
フリーで考えてみると
車の運転に対して
「運転前(中)に飲めない“不便”の解消」
「飲酒運転で捕まるかもしれない、事故を起こすかもしれないという“不安”の解消」
もちろん運転だけでなくさまざまな用途に広がっています。
「スポーツ中に飲めない“不満”の解消」
「海やゴルフなどで、飲んだ後にする運動への健康・安全に対する“不安”の解消」
また“お酒の飲めない人が乾杯用に使う”などの、新しい用途も広がっています。
(周りの人への配慮に対する“不便”の解消や、逆になんで乾杯ぐらいビールを飲まないんだと思う人の“不満”の解消に)
僕の後輩の妊婦さんも“安心”して飲んでいます。
技術的なコトはもちろん、この“不”を取り除かせるためのポイントになったのが、「0.00%」の表示ではないでしょうか?
当初キリン社内では、単に「ゼロ」と表示すればいいのではないか?という意見もありましたが、最近の飲料商品には、カロリー「ゼロ」と表示していても、実際には微量を含んでいるものも多く、「ゼロ」では商品の特長が十分に伝わらないと判断し「0.00%」の表示にしたとのことです。
「ゼロ」と「0.00%」は同じではなく、むしろその違いを表現するための象徴となっています。
(まとめますと)フリーの爆発的なヒットは、
●顧客のニーズ(“不”)を十分に読み取り、(乗る前に安心して飲めるビール)
●本物のビールに近い見た目と味わいを実現し、
(発酵させない製法でビールに近い飲み応えを実現)
●顧客にその魅力・特長を十分に伝えた
(「0.00%」の表示とそのことを伝える各種プロモーション)
ことにより成し遂げたと言えると思います。
(あとがき その一)
我が家では、主に週に一度ですが、休肝日を設けています。以前はその時はお茶や水などを飲んで、文字通り“ガマン”をしていました(苦笑)。しかしフリーの発売後休肝日には、当然のようにフリーを飲んでいます。もちろん“ガマン”は相当軽減され、さらに不思議なことにアルコールが入ってないにも関わらず、“酔っている!?”ような気分にさえなります・・・
フリーの完成度の高さを感じると共に、お酒を飲んでストレスを発散するという行為は、気分の問題が大きいのかなと思ってしまいます。(苦笑)。
私の妻や友達も、同じようなことを言ってますが、皆さんはいかがですか?
(あとがき その二)
売れる商品は、そのほとんどが偶然生まれるのではなく、不断の努力の積み重ねから生まれています。フリー開発に際しても、念入りな調査を実施しています。
【フリー/調査概要】
@試作品の味を顧客に評価してもらう香味調査(10回実施/定性調査)
A商品名はコンセプト固めのためのインタビュー(3回実施/定性調査)
B商品イメージがある程度固まった後にインターネット調査(2回実施/定量調査)
キリンでも前例のないこれだけ多くの調査とその結果に基づくディスカッションを経て、完成したフリーは売れるべくして売れた商品と言えるのではないでしょうか。
私達ダイナアーツでも、商品開発のための各種調査に携わる機会があります。
(僭越ではございますが、)調査のための仮説づくり、仮説を検証するための調査設計作成、調査結果からの分析において、ユニークで本質を突いた調査を実施し、多くのお客様からご支持をいただいております。
新商品開発・リニューアルなどでお悩みの皆様、是非一度、私どもダイナアーツへご連絡ください。
(ご希望であればフリーを飲みながら、)売れる商品づくりの話をしましょう!
参考文献 「日経ビジネスLINE」
(高木)
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