◆2009/6
どこが違う!? 人気の“王様のラスク” 〜群馬・高崎から全国展開へ向けたマーケティング戦略〜
皆さんゴールデン・ウィークはいかがでしたか?
もう一ヵ月もたっていますが・・・先月(5月)の加藤に引き続き、今月は私のゴールデン・ウィークネタからスタートさせていただきます。

加藤は香港に行っておりましたが、私はぐっ〜と近く、私の妻の母方の実家がある群馬県藤岡に日帰りで行ってきました。
最寄の高速道路の出入口、藤岡ICの近くには新鮮な野菜やお土産を売っている“ららん藤岡”という道の駅があり、、私達夫婦は実家の帰りに毎回買い物に寄っています。
この日もいつものように“ららん藤岡”の野菜売場で買い物をした後に帰ろうとすると、妻が「寄りたいところがある」と言い出し敷地内を歩き始めました。ついていくと、そこは華やかな赤・白・青のトリコロールカラーがまぶしい“ガトーフェスタ・ハラダ”というラスクのお店でした。
すると妻は私に・・・
「ここのラスクがスゴイ有名で美味しいんだって。なぜなら普通のラスクは売れ残ったパンから作っているけど、ここのラスクはラスクが美味しくなるために専用のパンから作っているんだって・・・」と私が聞きもしないのにハラダのラスクの凄さを話始めたのです。
しかし・・・
私は何度も“ららん藤岡”にも来ているので、ここにハラダのお店(というかラスクのお店という認識ですが)があることも知っていましたし、何より以前は藤岡の実家の帰り際に、祖母が“ハラダのラスク”をお土産に持たせてくれていたことも度々あり、ハラダのラスクをもう何度も食べています。(もちろん妻もです。)
それなのに何故あらたまって、今回はそんなことを言い出すのかと不思議に思い、私がそのことを告げると、妻は全く以前の印象がないようでした・・・
そして嬉々としてお店に入っていきます。

私はお土産を買うためレジに並びながら、ここのラスクってそんなに人気があるんだと考えていました。しかしよくよく思い出してみると、京王デパートの食料品売場に行った時にラスクにすごい行列が出来ていることを思い出しました。このような行列が出来ているのは“ハラダのラスク”にだけです。
もちろんラスクは美味しいのですが、なぜそんなに行列が出来るほど人気があるのだろうか・・・
今回はこの人気の“王様ラスク”について考えてみたいと思います。
ヒントは私の妻の“行動の変化”です。
(その前に・・・ここで誤解がないように書かせていただきますが、私の妻は物覚えが悪いわけでもなく、普段家で仕事をしていることもあり、昼の情報番組などをよく見ていてスイーツやお取り寄せ食品などには非常に詳しい方です。またもちろん味音痴でもありません・・・。そういう意味では“一般の主婦の消費者“であると言えるのではないかと思います。)
まず「ガトーフェスタ・ハラダのラスク」についてちょっとおさらいをしてみたいと思います。
〜ガトーフェスタ・ハラダ〜
明治34年群馬県高崎に創業の老舗洋風和菓子店「褐エ田」。
創業当初は和菓子の製造を手掛けてきましたが、昭和21年から製パンにも着手。一時はパンやケーキが売上の7割近くを占めていたほどです。しかし、地域性やバブルの崩壊、夏に弱い和菓子が主力商品であった要因から、売上の伸びも弱冠の頭打ちに。そんな折、「郷土に愛され、郷土を代表する本当に美味しいお菓子を作りたい!」という一念から、「究極のラスク」開発に着手します。
開発者の原田専務は「商品の評価は、食した後、どれだけ感動するかにかかっている」
として、今までのように、「売れ残りパンの再利用」ではなく、「ラスクにするためのパンから作る」という発想に転換し、ラスクにした時においしいフランスパン作りから手がけました。地元の製粉会社とオリジナルの粉を開発し、「幻のバター」の異名を持つバターを取り寄せ、水や塩など、材料の研究を重ねて開発しました。
よい商品を作っても売れなければ意味がない。
原田氏の持論は「お菓子は50%が質(おいしさ)、残りの50%がネーミングやパッケージ、コンセプト」。その持論通り、製品の質的水準に加え、物語やネーミング、パッケージデザインを重視し、出来上がったラスクに、「グーテ・デ・ロワ」(王様のおやつ)と名付けて2000年1月に販売を開始しました。
「グーテ・デ・ロワ」のターゲットは全世代。客層に偏りはなく、幅広い層から支持されて、今では群馬県内の姉妹店4店舗に加え、東京を中心とした関東近辺のデパートに専門店を展開。また電話、FAX、インターネットからの注文などで、販売方法やエリア制限を設けずに提供できるシステムを運営しています。
しかし、一番の強みは口コミ。原田氏は「質の高い商品に感動されたお客様からのリピートこそが最大の武器」であると語っています。
残り物のパンから作るラスクとは全く逆の発想で開発されたことが、あの美味しさの源だったのですね。しかし注目すべきは原田氏のその持論「お菓子は50%が質(おいしさ)、残りの50%がネーミングやパッケージ、コンセプト」と言うところです。
原田氏は美味しいものを作っても、それだけでは必ずしも売れるわけではないということがわかっていました。
地方の小さな老舗洋風和菓子店が、今やラスクブームの中心になり、東京のお店に行列ができるようになったのは、この持論をもとに、“究極のラスク“の開発ストーリーを”質(おいしさ)”とセットで広めていき、口コミを誘発させていたからと言えるのではないしょうか。
(ハラダのラスクとPCで検索をしてみると様々な人のHPやブログで推奨されています。)
私の妻の話に戻ります。
私の妻も以前(ハラダのラスクが有名になる前)はこの開発ストーリーを知らないで、このラスクを食べていました。(祖母は「帰りにでも食べな」と言って渡すだけで、開発ストーリーやこだわりの話などはもちろん全くしませんでした。)
美味しいとは感じていたとは思いますが、それだけでは印象に残るほどの“感動”はきっとなかったのでしょう。(つまり原田氏の言う50%しか魅力を感じていない状態です。)
そしてその後、ハラダのラスクは有名になり、この開発ストーリーやコンセプトもTVなどのマスメディアやインターネットでの口コミ(ブログ、SNSなど)で何度も目にする機会を得た妻は、次に“ららん藤岡“へ行ったら是非買おうと思ったに違いありません。
それが以前もらって食べていたラスクとも思わずに・・・です。
これは私の妻の特殊な事例でしょうか?
私は違うと思います。
一般の消費者の中には、このような人は数多くいるのではないでしょうか!?
一般的に商品開発者は、いい商品を作ることに夢中になり、“いい商品を作りさえすればいつか消費者は気づいてくれて売れる”という発想を持ちやすいものです。
しかし原田氏は、素晴らしい商品を作る商品開発者でありながら、いかに口コミを広げて売るかを考えていた素晴らしいマーケターでもあると言えます。
それを証明するのが“あの持論”です。
ハラダのラスクに行列ができるのは、ラスクが美味しいから“だけ”ではありません。
ましてや偶然ではありません。原田氏をはじめ“ガトーフェスタ・ハラダ”の皆様の、考えぬかれた(開発も含めた)商品戦略・販売戦略の賜物だと言えます。
(美味しいことも含めて)ここが他のラスクとの違いであり、ハラダのラスクに行列が出来る理由であると私は思います。
お客様が勝手に自社商品の宣伝をしてくれる・・・ こんなありがたいことはありませんよね。ハラダのスゴイところは人に伝えたい・伝えやすいエピソードを商品とセットに販売しているところです。
私の妻も聞いてもいないのに私に話をしたように、先日家に遊びに来た妻の友人に、このラスクを出したところ、またも聞いてもいないのにこのエピソードを話始めました。
“口コミ”の凄まじい効果ですね。
しかし“口コミ”は自然に発生するものだけではありません。“口コミ”を利用するマーケティングを“バズマーケティング”(※1)といい、現在は様々な企業が意図的に発生・利用をしようと努めています。(某大手ハンバーガーチェーン店で行列を作るために、並んでもらう人にお金を支払っていたことが発覚したなどは、残念ながらその失敗例ですね・・・)
私達ダイナアーツでも、商品開発から販売戦略まで、いい商品を作り、それをどのように売るかについて日々研鑽を積んでおります。
「売れる商品を作りたい・・・」「いい商品なんだけど、なぜが売れない・・・」
そんな悩みを抱えている皆様、是非私達ダイナアーツへご連絡ください。
一緒に新しいマーケティング戦略をつくっていきましょう!
(※1)バズマーケティングとは、いわゆる口コミを利用したマーケティングのこと。
バズ(Buzz)は、群衆が噂話でざわめいている状況を表す言葉として使用されている。
バズマーケティングが重視される背景には大きく3つあるとされている。
1)多量の情報・広告が発信される現代においては、これらの情報の大半がノイズ(雑音)になってしまう。通常のマスメディア広告の相対的価値低下に伴い、口コミの価値が高まっている。
2)広告や店員は良いことしか言わない。これに対する懐疑的態度により、口コミの価値が高まる。
3)インターネットの普及により、広範囲な人と人とのつながりが可能となり、口コミの力が強まっている。
(exBuzzwordsより参照)
参考文献
群馬県企業レポート(http://www.pref.gunma.jp/download/p34.pdf#search=‘原田節子’)
(高木)
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