◆2009/2
生キャラメル・ブームは偶然ではない!? 〜自己破産寸前から大ヒット商品を生み出したプレミアム戦略〜
去年の商品ヒット番付にも名前を連ね、入手が困難と言われている花畑牧場の生キャラメル、皆さんは召し上がったことがありますか?
私はお土産でいただいたことがありますが、口の中に入れると、“あっ”という間にとろけてしまうその食感と牛乳の濃厚な味は本当に美味しいですよね。
今回はこの飛ぶ鳥を落とす勢いのある花畑牧場の生キャラメルについて考えてみたいと思います。

まず皆さんご存知だとは思いますが、花畑牧場について整理してみたいと思います。
【花畑牧場とは】
花畑牧場とは、 1992年にタレントの田中義剛さんが北海道の十勝につくった牧場です。田中さんは十代の頃から牧場をつくりたいという夢を持っていて、その夢を実現させた花畑牧場ですが、当初はその経営は非常に厳しいものでした。
一時は30人いたスタッフも1人になり、借金も約3億円もあり、自己破産寸前にまで追い込まれることもあったそうです。
そんな苦境の中、様々な試行錯誤を繰り返し、苦節10年ようやくヒット商品が出ました。
最初のヒット商品は約3ヶ月の熟成期間を経て作られるセミハードチーズ「トムチーズ」というチーズで、ラーメン屋のトッピングとして使われてヒットをします。
更にユニークなひょうたん型をしていて、フライパンで焼いて食べるのがオススメな「カチョカヴァロ」というチーズが、そして入手困難とまで言われる「生キャラメル」が、続々と様々なメディアに紹介されるようになり大ヒットに至ります。
今では花畑牧場の売上は年商60億円、従業員も700人を超える(2008年11月現在)規模にまで成長しています。
最初の10年は出資者である所属する芸能プロダクションの社長から田中さんは「詐欺師」と呼ばれ罵倒されるほど、鳴かず飛ばずだった花畑牧場・・・
ではなぜここまでの成長を遂げることが出来たのか?
私はそこには3つのポイントがあると思います。
【1】「小さく作って高く売る!」
花畑牧場では牛乳をそのまま売らずに、加工して、高付加価値をつけて売ることを田中さんは常に目指しています。それはなぜかと言うと、販売価格にあります。
例えば、1頭の牛から搾った牛乳が20kgの場合、そのまま牛乳として出荷すると、牛乳の価格は農協が決めるのが大原則のためほぼ一定で、2千円程度にしかなりません。しかし、牛乳から加工したチーズなどは生産者が価格を決めていい事になっており、高品質で手作りのチーズなら2kgで約1〜2万円で売ることが出来ます。
つまり普通に牛乳を売るのに比べて約100倍の価格で売ることも可能なわけです。
田中さんはそこに着目して、牛乳をそのまま売らず、加工品として“手作り”、“高品質”、“希少性”、“プレミアム感”・・・などの高付加価値をつけて売る、つまり「小さい商品をいかに高く売る」ことを徹底しました。

【2】「プレミア感」の演出
花畑牧場では高く売るために商品のプレミア感を出す事を徹底しています。
これには5つのポイントが挙げられると思います。“生キャラメル“を例にしてみてみましょう。
@価格を絶対に下げない
“生キャラメル“は”一般のお菓子“ではなく”お土産”というカテゴリーに設定しています。
それというのも”一般のお菓子“として流通に卸せば、当然競合の動向や小売店からの要請で値下げをせざるをえなくなるからです。
しかし”お土産”は値下げをする必要もなく、結果、値下げによってブランドイメージが下がることはありません。
そして何より、1箱12粒850円という価格は”お土産”だからこそ実現できる価格です。
A販売チャネルの限定
”お土産”である “生キャラメル“は一番の販売先として新千歳空港に狙いを絞りました。
なぜかと言えば、年間利用者数1850万人、北海道の玄関口で全国から観光客が集まる新千歳空港で北海道のお土産の定番になれば、その商品の知名度は一気に全国に広まり、北海道に来ない方でも欲しがる、田中さんはそう睨んだからです。
そして今でも数多くある東京への出店の話も全て断り、(短期的なイベントは全国で行っていまが)出店は北海道だけです。
いつでもどこでも買える商品でない希少性、北海道限定のお土産というカテゴリーを維持することで、プレミア感を保っています。
B数の限定
もちろん手間の掛かる手作りなので、大量生産できないこともあると思いますが、希少性を出させるために、あえて多くの数を作らないようにしています。(田中さんは「あえて多くつくらない」と発言しています。)
即日完売、長蛇の行列、1時間で1,000個完売・・・ 数を絞ることで希少性を更に高めています。
C手間のかかる手作り
「夏の50度の暑さの中、鍋でキャラメルを回す・・・」「箱に詰めるのも、一粒一粒手作業で行っている・・・」。これらのエピソードは高品質の維持はもちろん、価格が高いことへの消費者の納得感になりますし、当然ブランドイメージの向上につながります。
そして“手間のかかる手作り“は参入障壁にもなります。大手企業が花畑牧場と同じことを行うことは難しく、リスクも高いため、大手企業の花畑牧場と同じポジションへの参入はそう簡単にはないというメリットもあります。(田中さんは「大手企業に出来ないことをあえてやる」と言っています。)
D話題性
代表がタレントの田中義剛さんということもあり、マスメディアをうまく使い話題を提供し続けています。
田中さんが番組でゲストに出るときにはお土産で持っていったり、料理番組で食材として取り上げられたり、“世界のキタノ”こと北野武さんに新商品のパッケージデザインを生キャラメル3粒で書いてもらったりと、話題・エピソードをうまく発信しています。
こうして見てみると、まさにプレミアム商品づくりのお手本のような展開ですね。
【3】商品開発・構成・使い分けの巧みさ
花畑牧場では商品開発においては3つのポイントを重視しています。
それは「目で美しく」「聞いて美しく」「食べて美味しく」です。
そしてそのようにして開発した商品は、その性格や顧客ターゲット毎に巧みに使い分けをしています。そのことを田中さんは芸能プロダクションに例えてこのように発言しています。
「生キャラメルがアイドル。ホエー豚丼は演歌歌手。チーズは万人受けするマルチタレント”」
その商品の性格を巧みにあやつり、時にはコラボレーションさせることにより、より付加価値をあげることに、田中さんは努めています。
以上のように、10年間という長い苦闘の時間を経て、田中さんはこれらのポイントを掴み、徹底的に具現化することにより、 1時間で1,000個を完売するようなメガヒット商品をつくることに成功しました。
まさに“生キャラメル・ブームは偶然ではない“と言えるのではないでしょうか。
大ヒット商品、メガヒット商品・・・
などというものは簡単には生み出せるものではありません。
しかしその商品の特長や性格にあった強みをいかし、有効なマーケティングを実践できれば、その道も開けてくるのではないでしょうか?
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(木)
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