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過去のマンスリー・トピックス
毎月、企業や社会の諸活動の中で気になるテーマ・話題に関するひとことエッセイや、とても有用な書籍へのひとこと書評を掲載中。 最新号、及びその他の過去のトピックスはこちらから。
◆2008/8 
二匹目の「トトロ」はいるか!? 〜宮崎駿監督のあらたなる挑戦〜

「ポーニョ、ポーニョ、ポニョ…♪」の印象的なフレーズを皆さんも耳にしたことがあると思いますが、これはもう皆さんご存知だとは思いますが、アニメ界の巨匠・宮崎駿監督の4年ぶりの最新作「崖の上のポニョ」の主題歌です。
映画は7月19日より全国481館で封切られ、日本歴代第1位の興行収入を誇る同じく宮崎監督作品の「千と千尋の神隠し(304億円)」と遜色のない好スタートをきりました。
しかもスクリーン数は「〜ポニョ」の方が「千と千尋〜」より145スクリーンも多く、また「千と千尋〜」は夏休みが終わる8月末まで、ほとんど落ちることのない驚異的な集客を重ね、その後もロングセールを記録したことなど考えてみると、 「〜ポニョ」が興行収入をどこまで伸ばせるかは、今後も今の集客ペースをほとんど落とすことなくどこまで継続できるかにかかっていると言えるのではないでしょうか。 ちなみに配給をしている東宝の目標は“200億円”です。

今回は、「〜ポニョ」を含む宮崎駿監督の長編アニメーション作品(以下、宮崎アニメ)を通じて、仮説づくりとポジショニングの重要性について少し考えてみたいと思います。
(※本稿は作品の内容についての批評を行うことを目的とておりません。また個々の作品のイメージや位置づけなども、筆者個人のイメージや推測によるものであることをご了承ください。)

まず宮崎アニメがなぜこれほど売れるのかを今一度整理してみたいと思います。
当然作品のクオリティーが高いということがあげられますが、それ以外にも宮崎アニメはさまざまなプロモーションや話題づくりを実行して、映画を盛り上げています。

例えば・・・
@日本テレビの全面的なバックアップ・・・新作公開に合わせた過去の宮崎アニメ作品の連続したTV放映やプロモーション番組・試写会情報などを集中的に放映して、新作への期待を高める。
A耳に残る音楽・・・「もののけ姫」 (歌:米良美一)、 「となりのトトロ」(歌:井上あずみ、作・編曲:久石譲、作詞:宮崎駿)、 「崖の上のポニョ」(歌:藤岡藤巻と大橋のぞみ)、など耳に残る音楽を巧みに使い、作品の認知度や興味、鑑賞意欲を高める。
B巧みなキャッチコピー・・・お客様は神様です。(三波春夫の名言/ 千と千尋の神隠し)、ふたりが暮らした。(糸井重里/ハウルの動く城)、カッコイイとは、こういうことさ。(糸井重里/紅の豚)など、音楽同様、頭に残るキャッチコピーを活用している。
C豪華声優陣・・・山口智子、長嶋一茂、天海祐希、所ジョージ(〜ポニョ)、倍賞千恵子、木村拓哉、美輪明宏(ハウル〜)など、声優専門ではない著名人、人気俳優などを使うことにより、話題づくり、作品へのイメージアップ、新たなファンの取り込みなどのさまざまな波及効果を期待できる。
D他メーカーとの様々なコラボ 等

上記のプロモーションや話題づくりは宮崎アニメだけの特長ではありませんが、今や国民的人気を誇ると言っても過言ではない、宮崎アニメが実行するとその効果は絶大だと言えるのではないでしょうか。

しかし宮崎アニメは全てが『千と千尋〜』のようなメガヒットを記録しているわけではありません。ここで主な宮崎アニメの興行収入を見てみましょう。

●1984 風の谷のナウシカ 配給収入7.6億円
●1986 天空の城ラピュタ  配給収入5.8億円
●1988 隣のトトロ      配給収入5.9億円
●1989 魔女の宅急便   配給収入21.5億円
●1992 紅の豚        配給収入28億円
●1997 もののけ姫     配給収入113億円
●2001 千と千尋の神隠し 興行収入304億円
●2004 ハウルの動く城   興行収入196億円
*2000年度から興行収入の発表に切り替わった。配給収入は映画によって異なるが興行収入の5〜7割といわれる。(Wikipediaより)

上記を見ると宮崎アニメのメガヒットは1997年の「もののけ姫」からの3作品です。
しかも驚くべきことに、宮崎アニメ(スタジオジプリ)の象徴ともいえる「隣のトトロ」は、宮崎アニメの中では最低ランクの配給収入しか上げていないことがわかります。

次に主な宮崎アニメを二つの軸で区切ってみたいと思います。(図1 ポジショニングマップ参照 ※宮崎アニメは区切った軸の両面を持ち合わせている作品がほとんどです。縦軸に関しては、明確な大人向け、または子供向けというよりはファミリー、カップルを含む幅広い層をターゲットにしています。 横軸についても宮崎アニメは、「メッセージ性のあるファンタジー作品」と言えると思いますが、このポジショニングマップでは、あえて“どちらかと言うと・・・”という尺度で区切っていますのでご了承ください。)

図1を見てみると、今回の「〜ポニョ」は最近のメガヒットを連発している「大人向けの巨大な世界観のある作品」ではなく、初期の興行的には決して成功したとは言えない「子供向けの素朴な作品」でのポジションで、今回あえて勝負をかけてきていると言えるのではないでしょうか。(もちろん当時と現在では宮崎アニメの認知度やファンの数は全く違いますが・・・)
しかしこのポジションは興行的には成功をしていないとはいえ、言わば宮崎アニメの象徴的なポジションであり、評価も高い作品が多いという、いわばジレンマが存在しています。
もちろん宮崎監督の作品に対する様々な想いが当然大きなウェーとを占めていると思いますが、宮崎アニメ(スタジオジプリ)は今回の「〜ポニョ」で、このジレンマを解消し(興行的成功とイメージ・象徴を合致させ)、今後の作品づくりにおいてより優位な立場ですすめる、つまり興行的なバックアップを受けながら、作りたい作品を作る、そのためにあえてリポジショニングを実行したのではないでしょうか。
つまり「〜ポニョ」は宮崎アニメのあらたなる挑戦の第一歩と言えるのではないでしょうか。
(上記はあくまでも私の仮説です)

「二匹目のトトロ」はいるのでしょう・・・・しかも二匹目は興行的な成功も伴っていなければいけません。今後の宮崎アニメの方向性を占う意味でも「〜ポニョ」の今後の評価・興行収入から目が離せませんね。

皆様もこのような視点で、今後の「〜ポニョ」の興行収入、その評価、そして宮崎アニメの次回作以降の方向性などを見てみると、また今までと違った面が見えてくるのではないでしょうか。

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(高木)


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